AMANOIWATO vol.5

どのくらい時が経ったのだろうか。
時間感覚は麻痺し、時計の止まった無限のような時間を耐え忍んでいた。

 

漆黒の暗闇の中、地底の奥底から鳴り響く音の気配を感じながらなすがままに任せていると、自分という存在も、今ここ、という時間や場所の存在も希薄になっていた。これが無我の境地というものなのだろうか。
思考が冴えているのか、鈍っているのか、そのどちらでもないような言葉では言い表せない感応が脳の中で起きていた。

 

以前訪れた古代中国のタオ(道教)のセンターの施設で得た情報の中で、例えばカッパドキアやチベット、日本の即身仏のように古今東西における瞑想のマスター達の最終ステージは、洞窟の真暗闇で何日間も籠もって修業をする事であり、これを科学的に解明すると、脳の松果体で分泌されるセロトニンが暗闇の中でメラトニンに変換され、その後約一週間で5-meo-ジメチルトリプタミンという物質に変換され、9日目からジメチルトリプタミンいわゆるDMTという幻覚物質に変換される秘法が書物に書かれている。

 

実際その施設ではダークルームと言われる暗闇の建物の中で12日間生活をし、瞑想を始めとするタオのワークの授業が行われる。
その授業は自分は未体験だが、知り合った受講者たちから直接聞いた神秘体験の話は大変興味深いものがあった。

 

ジメチルトリプタミン=DMTは世間では幻覚剤とされ麻薬と認識されたりもするが、豆やナッツ、肉や果物などのおもにタンパク質に多く含まれるヒトの必須アミノ酸の1つであるトリプトファンから二酸化炭素が抜けた物質トリプタミンの一種で、これはヒトに限らず細菌をはじめあらゆる動植物が生命力を維持するために自ら分泌する、謎で神秘の物質だ。

 

この物質を多く含むもので特に有名なのが、自分も南米で体験したアヤワスカをはじめとするシャーマニズムの儀式でも尊ばれる聖なる植物だ。
またヒトが赤ん坊として生まれてきたとき、そしてその生命の臨終のときに、我々皆が松果体から自らDMTを大量に発生させることも知られている。
そのため赤ん坊は霊を見ることが出来たりテレパシーを使えたりするし、臨死体験で生死をさまよった者は必ずその神秘体験を語る。
日常で夢を見ている時にも発生するので、誰もが経験する夢の中の幻想的なイメージの首謀者とも言える。

 

この物質を司る脳の中心部の松果体は、人間にとって最も重要な器官の1つとして認識されている。
またインドのヨギなどの教えでも、直観力や第六感を送受信するアンテナの役割を担う眉間のチャクラとして、サードアイいわゆる第三の眼とか心眼とも言われている。

 

今思えば、勇気とともに飛び降りたブラックホールの奥底へ転落した瞬間、即ちそれは生と死の狭間の臨死体験となって脳から大量のDMTが分泌したのだろう。
そしてそのまま必然的に強制的に、高千穂の秘伝とされる天岩戸の洞窟の最深部の暗闇において、ヨガ呼吸と瞑想の最終ステージへと誘われる宿命になろうとは、なんと不思議な巡り合わせなのだろうか。

 

こういう場所は一般的には自然の造形美とその神秘性を賞賛されるが、この心眼開く知覚の直観では、ここは超古代文明の遺跡であり、聖なる儀式の場でもあるピラミッドの内部として感応する。
ここには大いなる存在がエネルギー体として顕在していることははっきり分かるのだが、もっと明確に知覚することが出来ないでいる自分の能力の限界、磨くべき滞りを思い知らされる事となった。

 

それはこの目前に現れている神秘の道、この洞窟のさらに奥へとまだまだ先に進むべき道が限りなく続いているという現実の視覚としてもはっきりと示されていた。
しかし無念にも立ち上がることは出来ない。
否、もし仮に歩けたとしても、その先へ進むには今の自分には身分不相応であることは自明の理だった。
この異界な魔境の地に着地し垣間見ることの出来た事実、その奇跡と畏れ多き霊験の神業に、深謝の念を感じずにはいられない。

 

つづく

 

次回の記事は2018/08/10(FRI)に更新です!

 

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