EXPE INTERVIEW LONG SET VOL.3

Question = K.Yamaguchi and Friends
Answer = Yoshitake EXPE
 
Q:では、黒人音楽やファンクに傾倒していた時期から、現在Yoshitakeさんがされている電子音楽のような音響的なスタイルに移行したのはどのような経緯ですか?
 
A:プロの黒人ミュージシャンに混ざると、彼らのDNAからくるバネや躍動感のようなもの、違う人種なんだってことをはっきり目の当たりにして。
その頃は若気の至りで、彼らと同じグルーブに一体になっていると、自分も黒人になったんじゃないか?!くらい勘違いしてましたが、笑
ですが次第にカバーバンドだったこともあって、モノマネに過ぎないのじゃないか?と思い始めたんです。
彼らの仲間の黒人ギタリストが日本に戻ってくると、当然僕と交代になるわけです。
 
同時期、来日中のミュージシャンと出会える機会も多くあって、尊敬するギタリストでP-FUNKの経歴もあるスティービーサラスやそのメンバー達と一緒にセッションする機会に恵まれましてね。
僕は以前から彼の大ファンだったので演奏を褒められたりしてすごく嬉しかったんですが、同時に、本場のレジェンドには敵わないなぁと、自分は劣化コピーなんじゃないか?って疑問も生まれたんです。
 
 
Q:日本人として、一人の人間としてのマイノリティーを考えるきっかけになったということでしょうか?
 
A:そうですね。何かのコピーではなくて、自分の音楽をもっと模索したいって気付かされたんだと思います。
明らかなDNAの違いを痛烈に感じましたし、自分のやってる音楽にも満足ができてなかったんだと思います。
あまり自覚がなく音楽をやっていたからでしょうね。
 
 
Q:自覚とはどういうことでしょう?
 
A:何故、何のために、何を目的として音楽をするのか、という自覚がなかったんです。
好きだから、なんとなくやっていたんだと思います。
 
ファンクやソウルのカバーバンドで黒人ミュージシャン達と対等に演奏が出来て仕事になっても、でもそれが自分がやりたい事ではないなと。
当時やっていたオリジナル曲のバンドの方も、なにか雰囲気が似たコピーの一種と思えてきて、もっと深く探りたいなって。
 
当たり前ですが、ミュージシャンって楽器を弾いてて皆似たように見えても、その目的や意識はみんなそれぞれに違うはずなんです。
ですが集団であったり経済活動だったり流行だったり、社会的な要素が入ってきて、妥協したりすり合わせる必要もあって、目的を深く考えないようになりがちなのかなと思います。
 
 
Q:音楽スタイルだけじゃなく精神的にも変化があったのですね。
 
A:はい。それでバンドも解散し、ライブ活動もしなくなりまして。
その頃、父親の病気と死などもあったり、私生活もかなり荒れた日々で、すべてがドン底で。
それでも常にレコードをあさりギターを模索しながら、音楽だけが唯一の救いでした。
 
高校時代からカセットテープの4トラックMTR(マルチトラックレコーダー)で宅録をはじめ、そのあとは8トラックに移行して、
子供の頃に戻ったように、ファンク風の実験的でサイケデリックな、ジャンルがわからないような音楽を作ってました。
この頃から音響機器を意識的に楽器として使うようになってきましてね、出来たデモテープにスペースギターというクレジットを名付けたんです。
 
 
Q:スペースギターの誕生。それはいつ頃でしょうか?
 
A:90年代末頃かな。
大好きなブーツィーコリンズがスペースベースとクレジットしていたので、いつか一緒にやれたら良いなと思って。
Fuji Rock(2008年)に出演した時、ブーツィーに実際に会ってこの話を伝えた時は、喜んでハグされてとても嬉しかったです。笑
 
90年代末期のクラブは面白くて、友人がDJしていて毎晩のようにクラブに踊りに通ってたんです。
ちょうどドラムンベースが出てきたりして、目紛しく進化してる時期で。
 
DJと一緒にライブやレコーディングもしましたが、レスポンスが生バンドのようには出来ないので、DJの感覚で生バンドがやりたくなって。
当時はバンドしてる人ってクラブで一晩中踊ったりしなかったので、感覚が少し違うんですね。
クラブ遊びに来てるミュージシャンと知り合ってスタジオに入ったり、バンドマンを夜中のクラブに連れてったりしてメンバーを探しで苦労しましたね。
 
 
Q:DJの感覚で生バンドがやりたかった、というのは言い換えるとダンスミュージック、クラブミュージックの感覚で、DJとバンドマンの感覚が違う、というのは、ダンスミュージック、クラブミュージックの形式的な、スタイルのコピーだけどクラブで踊らないから感覚が違う、という捉え方で間違えありませんか?
 
A:そうですね。
いわゆるバンド形式の音楽と、レイブやクラブでのダンスミュージックのツボは違いますからね。
一晩中踊る経験をしてるプレイヤーの音と、譜面やパターンを演奏するだけのプレイヤーの音には感覚的な違いが出てくるんです。
 
そうこうして2000年代になって、ボアダムスのメンバーに誘われて一緒にバンドを組んだりレコーディングに参加して大阪のアンダーグラウンドシーンで活動を続けました。並行して自分のソロプロジェクトとしてnutronのアルバムをレコーディングしてリリースするに至りました。
 
 
Q:90年代のファンクバンド時代からオリジナルのスタイルを探し求めていき、nutron“spectra”をリリース。現在の演奏と近い音色が伺えます。
また同時期に活動を開始しているPARAやボアダムスもそうですがリズムに対するこだわりが凄い。ここに至った背景も気になります。
ゼロ年代の大阪ではFlower Of Lifeというパーティーが全盛、自分は残念ながら世代では無く経験していないのですが聞く話では物凄かったそうですね。
 
A:90年代末期の大阪のクラブシーンはテクノ、トランス、ハウス、ジャズ、ヒップホップ、ダブ、ドラムンベースなどが分かれてそれぞれ面白くて盛り上がってましたが、音好きの人ってジャンルではなく今日は此処だ!とパーティーを嗅ぎつけるので、大体いつも同じ面々が集まるんですよね。笑
そんな顔見知りになった同世代で、ジャンルではなくてもう少し自由度の高いシーンが生まれる雰囲気がでてきたんですね。
 
2000年に入るとFireflyという、かなり自由度高く実験的なパーティーや楽器のセッションが気軽に出来る小さな箱ができて、当時の大阪のアンダーグラウンドシーンはとても面白くて独特な成長をしたのではないかと思います。
 
そんな中、さらに味園ビルというキャバレーで有名な建物が音楽に解放され、Betalandが中心となり地下の廃墟空間を片付けてMacaoと名付けられた巨大クラブがオープンしたんです。
その中心的パーティーがFlower of Lifeだったのですが、爆発的なパワーで物凄かったですよ。
味園ビル内にはキャバレーやホテルやフィリピンバーや会員制クラブやいかがわしいスナックやホモのハッテンバなどが渾然となって、仲間も住んでたりして、時間と空間が歪んでいて知らないうちに何日間か経っていた、なんて事もありましたね。
 
 
Q:すごい。浦島太郎じゃないですか(笑)
 
A:実はその味園ビルを仕切っていた人が僕を応援してくれて、Macao建設中の巨大スペースを無料で練習に使用して良いよと申し出てくれたんです。それで5日間レコーディング機材を持ち込ませてもらってレコーディングしたのがnutron“spectra”なんです。
 
リズムに関して言えば、僕の場合はやはり黒人的なFUNKのグルーヴを重視していたんですが、そういうリズム感を持った人は周りにどこにもいてなかった。そんな中nutronのドラマー高橋くんとの出会いは奇跡であり運命だったと思います。
彼とはじめてスタジオに入って音を出した瞬間ぴったりグルーヴが一致したんですね。お互いがびっくりするくらい火花が飛び散ったんです。
実は僕も彼も、極限的にグルーヴを共有できるミュージシャンが見つからずで、メンバー探しに妥協したり、活動が続かない者同士だったので、、まさに宿命でしたね。
 
 
Q:多くの表現が活発で混在していた様子が伺えます。
その渦の中で奇跡的に出会い生み出されたのがspectraだったんですね。
 
A:味園ビルはかなりミステリーな空間だったので、様々なサイキックな現象が実際に起きてましたね。
Spectraのレコーディングも、録音されたデータのほとんどに後で聞くと謎のノイズが入っていて、使えないテイクがかなりたくさんありました。
ほとんど使えなくてやりたかったfunk系のトラックはほぼ全滅で、エンジニアの林さんはこの最悪な事態に頭を抱えてましたよ。笑
ですがノイズがないテイクを集めてみると、あのアルバムの流れが必然的に生まれたので、結果的には完璧なハプニングでしたね。
 
 
Q:ハプニングも含めて奇跡的な流れですね。自分の意思の外側で動かされるという。。
今の時代じゃ中々経験できない、まさにサイキックな現象ですね。
 
A:あそこは特にパワーが強かったですが、そういう自分の意思を超えた流れって現在も常に起きてると思います。
 
つづく
 

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