南米ツアー雑記 vol.1

多くの人が僕のことを旅人と呼んでくるが、自分自身ではそう思っていない。
意外かもしれないが、本当は旅に出たくない。

出発前は行きたくなくていつもナーバスになってしまう。
旅は自分にとって宿命なんだと思っている。現在のところは。

 

実は2004年の冬、名古屋のRADIXという箱で演奏前に真っ暗の中にVJが出すプロジェクターの強い光で床がよく見えず高いステージから落ちてしまう事故があった。その頃は酒の量も多く煙の量も多い刹那的時代だったので、いつかは起こることだったと思う。
脇腹を打撲、右手を骨折していたのが、全く平気でライブを演奏した後、女の子と飲みに出かけた。

 

翌日オーガナイザーに無理矢理病院へ連れられると、骨折が判明しギタリストということで強力なギブスをはめられ、何もできない状態になり、箱のオーナーが大阪の自宅までわざわざ搬送してくれた。
その後のライブはギブスを使った特殊奏法を編み出して行われたが、決定していたクリスマスの聖歌隊とボアダムスのコンサートへの参加はキャンセルとなった。
ギブスの期間は約一ヶ月ということで、すぐに行かねばならなかった病院に一ヶ月後に出向くと、骨折箇所はほぼ治っていたが、すぐに外す予定だったギブスの影響で右指から右肩までの全ての関節や筋肉が固まってしまって、これは今でもその癖がつきスムーズに動かすことが出来ないでいる。自業自得だ。

 

その頃はこれが重大な事態とも考えておらず、ピックを使った奏法を再び始めることができたので、通常の演奏も再開し、腕が動かないまま沖縄で2度目の免許を取りに行った。飲酒運転をして免許が取り消されていたのに、懲りずに無免で飲酒運転もするという今では考えられない日常生活だったのだ。

 

2007年の夏。忘れもしない敬愛してやまない音楽家、エグベルトジスモンチが15年ぶりに来日コンサートをするということで、東京の第一生命ホールに出向いたが、その時の神懸かった演奏に感激し、その1音1音を味わいながらその気持ち良さに失禁しそうになりつつ、同じ音楽をする者としてはこれでもか!というくらい鞭で打たれるような辛さ、それは自分が一生かけても至ることが出来ないであろう高みを見せつけられ、その現実を直視するトラウマ的体験でもあった。ちなみに偶然にも隣に座っていたのが、音楽仲間であり大先輩でもあり友人でもあるキリングタイムのMA*TO氏だったのを憶えている。
その衝撃的な体験から帰宅すると、生まれた時から家にあったクラシックのガットギターを取り出し、ジスモンチのようにアコースティックの楽器一つで800人近くの観衆を夢の世界へ虜にする魔術を思い出しながら弾いてみるのだが、数年前の事故の後遺症によって自分の指を操るどころか動かすこともままならず、どんな初心者でも指さえ動けば音は鳴るが、僕の場合はその音がならない程、指の神経はコントロールすることを忘れていた。
これまでずっとエレキギターをピックで弾いてきていたが、クラシックスタイルの指弾きも多少心得があっただけに、この障害の発覚は相当なショックだった。

 

それからというもの毎日数時間の指のリハビリを日々続け、それは現在2018年にも至る。
怪我の功名と言うが、自分の場合はこれをきっかけに、指の運動に最適な曲を作りガットギターでもライブで演奏することになった。もちろん人にはそれがリハビリだとは分からないように振舞っていたが、実際のところ自分の能力ギリギリの運指で毎度のライブは常に緊張の連続でもあった。
冬になると、思うような演奏がままならなくなってしまい残念な演奏を披露することになるので、寒さは一番の恐怖となり、他の季節でも充分なウォーミングアップを要すので楽屋のない会場では苦労する時もあった。

 

そこで思いつくのが冬に暖かい場所へ行くことであり、自分の場合は指が動かなくなる恐怖を避ける理由で南半球や南国に移動している。
しかし今年2017-18年の冬は日本に留まりたいという、荷物が重く移動と演奏が延々と続き、経済的にも精神的にも想像を絶するような過酷なひとり旅にはもう出たくない、、そんな気持ちが強かった。部屋を最強に温かくして、ゆっくり日本の冬を味わいながら制作や勉強をして過ごしたかった。

 

2005年にヴィパッサナー冥想を習い経験するきっかけに、自分の生き方や考え方がゆっくり少しづつ変化してきて、数年前から坐禅や坐禅断食なども行うこと、「内観」すなわち自分自身の思考や感情をじっくり観察することや、そこを超えて潜在意識に辿り着く瞬間の癒しや気付き、、自分の感情と思考を超えた自分が想像もできなかったような回答や導きが、自分の潜在意識、宇宙から発せられることを、最近ようやく実感できるようになったのかも知れない。
その潜在意識、宇宙からの声が再び南米へ行けと指令を送っている。

 

つづく…

 

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