南米ツアー雑記 vol.11

間違った正しさを押し付けられ、何かしっくりこなくて反抗してみても、では何が本当に正しいことなのかが実はよく分かっていない。その行き先も方向も分かっていない。言葉にならない思いとともに。

 

社会にうまく溶け込めないのに、溶け込まないと生きていくことは出来ない。
正解は謎に包まれている。それを埋めるため誤魔化すための何かが必要だ。
間違った愚かな行動を繰り返しながらも、すがるような気持ちで楽器に触れ音楽が側にあることで、何とか救われていたような気がする。
しかしながら音を続けていく中で、音楽に関わる世界もまた1つの人間社会として、様々な複雑さや奇妙さを垣間見ることになる。
それもあって、こうして流浪しているのかも知れない。

 

旅を続けながら音楽をすることは、他者にとっては夢のような人生だと言われることもある。そうなのだろうか。
道がない道を選んだ自分の宿命ではあるが、自分に嘘をつかなければやはり摩擦は起きる。その結果、様々な犠牲がともない、迷惑をかけ、周りを傷つけ、自分を傷つけることを繰り返している。
常に心の奥底に人には打ち明けられない決定的で永遠に取り除くことのできない悲しみと苦しみを持ち続けている。

 

映画監督でも知られる詩人アレハンドロ・ホドロフスキーは語った。「芸術の目的は治療することである。人を癒さない芸術は本物ではない。」
ホドロフスキーはシナリオライティングの手法と西欧の神秘主義、南米各地のシャーマニズム、東洋の禅の影響などを融合し、サイコマジックという新たな心理療法を構築し発明した。
彼の自伝「リアリティのダンス」には、父親から暴力を受けて育った幼年期から始まり、独創的な哲学が物語の中で綴られている。
彼と同様、僕もまた厳格な父親から暴力を振るわれながら育ったため、心情を察することが出来る。
いったいどうすれば自分自身を、人を癒すことが出来るのだろう。彼のように、しかし別の自分自身の方法で。
その方法を獲得するために、音楽をし旅を続けているのかも知れない。

 

シャーマニズムの原点もまた人を癒すことと言える。それは人という範囲を超え、宇宙全体の秩序に生き従う掟のようなものだ。
自然と共存する社会は美しく理想的にも思えるが、場合によっては人を殺めることも許されたり、むしろ必要とされる場合もある厳しい社会でもあり、現代人にとっては驚かされる価値観の上に成り立っている。

 

近年、欧米ではアマゾンの植物療法の研究が進んでおり、癌や鬱病、アルコール依存症、アルツハイマー病などの特効薬になりうる可能性を提示し、各種の神経疾患の治療・トラウマなどのショックに起因する脳の損傷を和らげる治療への可能性も期待されているという。
シピボ族の集落へ行く前に、西洋人が主宰するアマゾンの植物を研究する施設に数日間滞在していたが、そこには様々な薬草が栽培・収集され、有益な情報がたくさんあった。
主宰者はヒーラーのような事も行い、実際にアヤワスカをはじめヨポ、ピリピリ、サンペドロ、ミモザなどを試すことも出来、ブッフォアルベリアスというメキシコにのみ生育するカエルの分泌する毒を喫煙するマヤ文明でも使われていた儀式によって、異次元世界の謎について理解することも可能だ。
他にもクラボワスカという強精剤をはじめ、愛や幸運を身につける植物など面白いものも多数あったが、これら全ては先住民がトランスと呼ばれる特異な心理状態に入った後、神や精霊から授かった知識だという話だ。

 

旅で知り合ったシャーマニズム経験者たちが語ることで興味深いのは、マエストロと呼ばれるシャーマン自身のスキルやバイブレーションが儀式において浄化において最も重要だとする話題をしばしば耳にした。これは滞在した研究施設の西洋人も同じ見解だった。

 

ジャングル奥地の部族での生活を終え、再び彼の施設に戻った際、彼の行う儀式の真似事をもう受けようとは思えなくなっていた。
彼はシャーマンと同じ物質を扱うので、当然ながら特有の作用を引き起こしはする。しかし彼が行う事は、基本的に物質としての薬草を用意して差し出す事と、その知識や情報の伝達が役割で、儀式の最中には聖歌らしきものを歌うが、たとえ物質が深く作用しても、部族のマエストロのような独特な深みのある体験はそこにはなく、気づきと癒しの効果は段違いだった。

 

その理由を考えてみると、根本的にアヤワスカについての認識が、西洋医学で処方するような物質的な捉え方にあるからではないかと思える。
極端に言えばドラッグのディーラーと変わりない意識だ。
明確に、儀式においてマエストロの信じている世界(意識といっても良い)がこちらに伝わり浸透する面が想像以上に強く、西洋人特有の物質的で科学的なモノの捉え方をする理念に限界を感じる瞬間でもあった。
鍵となるのは物質ではなく魔術だ。

 

つづく…

 

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