南米ツアー雑記 vol.12

2018年3月25日 日曜日。
大詰めを迎えたEXPE南米ツアーに思いがけない幸運なコンサートが開催された。

 

1月にブエノスアイレスで演奏した後、アルゼンチン国内を演奏旅行しながら最終的に北上しパラグアイに入り、その後はペルー、アマゾン、チリを周りアンデスを超え再びメンドーザ経由で南米のパリと呼ばれるブエノスに再び戻ってきた。
この旅の途中ベーシストのセサールフラノフからメールが届き、ブエノスで最も良いコンサートホールのうちの1つでEXPEの公演が出来そうだよと連絡が入っていたのだ。

 

CCK コンサートホール

 

会場はブエノスアイレスの旧中央郵便局を改装したCCKという文化センターのコンサートホール。

 

CCK ブエノスアイレス

 

このホールは政府が運営していて、なんと入場料は無料。
しかしチケットを指定の日時に並んで手にいれる必要があるらしく、人気のコンサートは入手困難らしい。
夏の期間は毎週のように大御所のコンサートが開催されていて、同じ3月のプログラムを見るとパティスミスの写真の下に自分の写真も並んでいて、自分も外タレとして扱われている事実に少し不思議な気分になった。

 

César Franov

 

セサールのアイデアでは、当初は弟のアレハンドロフラノフに、モノフォンタナとカブサッキと僕たちで一緒に演奏しよう、と言う話だったが、前夜にもエメルジェンテという会場でこのメンツでライブがすでに決まっていたので、そのイベントをオーガナイズするマリナに反対されて残念ながら少し違うラインアップに変更された。(モノフォンタナはそれだけ愛好家や音楽家たちにマエストロとして崇拝されているというわけだ)
なおかつ、CCKの方は無料なので観客が流れると困る、ということで告知も禁じられていたが、嬉しい事に、心配をよそに見知らぬ日本人アーティストの800枚のチケットは既にソールドアウトになっていた。日本ではありえない事だ。

 

Marina Fages

 

同日の同時刻、同じ建物内にある豪華なシンフォニーホールではアカセカトリオとオーケストラの共演会も開催されていて、こちらも即完売だったようで、アルゼンチンの文化度の高さに驚きと羨ましさを感じずにはいられない。

 

会場を訪れると、外観は豪華な石造りの巨大な建物で、夏の間はライトアップもされ観光客も多数訪れているようだ。
関係者用のゲートも厳重にセキュリティされていて、パスポートチェックはもちろん、持ち込む楽器の個数まで厳格にチェックされる。
搬入口のエレベーターは今まで乗ったどこよりも広大で、カブサッキは「日本の実験音楽の箱のサイズはここよりも小さいよね、このエレベーターで演奏しよう」と冗談を言った。

 

Fernando Kabusacki

 

コンサートホールのアコースティックは美しい響きで、楽器専用の電源もクリアーでパワフル。エンジニアも完璧だ。
そう言えば、5年前にアルゼンチンの国営放送キャナルシエテで演奏する機会があったが、そこでも同様だった。電圧240ヴォルトの効力も大きいと思う。

 

ドラマーのサンチャゴバスケスと対面するのはここが初めてだった。
翌週には彼の主宰するラグランデというプロジェクトにゲスト出演することが決まっていたし、またその翌日には幸運な流れで一緒にレコーディングスタジオに入ることも急遽決まった。
何より僕は彼のドラミングの大ファンで、モノフォンタナのアルバム”シルエロ”の完璧な演奏には毎回度肝を抜かれている。

 

Santiago Vázquez

 

彼のドラムセットにはおもちゃのようなモノが多数セッティングされていて、遊び心に溢れていた。以前に聞いた噂では、ヤシの木をドラムセットに組み込んでいて、ワサワサと揺らすとのことだったが、さすがに今日は持ってきてなかったようだ。
コンサートの締めくくりに聞かれる篠笛のような音は、彼が吹いている。

 

Santiago Vázquez

 

アレハンドロがピアノを弾くと、会場の空気が一瞬にして変わった。
赤ちゃんのような笑顔をしながらも、大きく力強い指のタッチは自由自在で、ピアノが西洋人の楽器だとつくづく感じさせられる。
ホール中に浮き通った音を敷き詰めながら、ウインクをしてきた。
彼のマックのスクリーンは壊れていて、斜め半分が真っ黒。その見えない部分を本当のブラインドタッチで操作していて笑わされた。
またシンセサイザーの鍵盤にも所々シールが貼ってあって、何かの音階をマーキングしているようにも見えるが、実はそのシールの部分を強く弾くと音が発音するというくらいボロボロなのだ。
後日、彼の車にも乗ったが、シートは埃だらけで雑草も生えている。彼の家の床も土があって草木を生やしていてお気に入りのようだ。本当に愉快で境界線のない生活をしている大天才だ。

 

Alejandro Franov

 

兄のセサールもかなり変わり者だけど、学者肌で冷静な部分が弟アレハンドロとは真逆だ。
面白い話がまだまだたくさんあるので次の機会に書こうと思う。

 

サウンドチェックを済ませて、楽屋に案内された。
楽屋も驚くほどの広さで、スペースが広すぎて持て余すほどだった。
フラノフ兄弟と僕たちはワインを開けてスナックを頬張り、煙草を吸う場所を探し求めて館内を彷徨った。

 

隣接するシンフォニーホールは建物の中に宙吊りのように設置されており、眩いばかりのキラキラと輝くクジラの外観となっており、観光の名物になっているようだった。中ではアカセカトリオがリハーサルをしている。

 

そうこうするうちに僕たちのコンサートがはじまった。

 

最初の30分が僕のソロセット。
そのあとに、アレハンドロとセサールのフラノフ兄弟が加わって、アレがソロ演奏したところに我々が加わっていく。
そして、カブサッキ、マリナ、サンチャゴ、と順番に同様のスタイルでステージに加わっていき、最後は全員で30分くらい演奏してトータル90分のプログラムということだけが決まっていた。

 

どんな曲でどんな雰囲気でどのキー(調性)かはまったく打ち合わせされなかったが、極めて自然に、観衆から即興だとは感じられない構成にまとまったのは流石ブエノスのトップミュージシャンの布陣だと驚かされる。

 

そしてコンサートは終わることのない拍手で閉じられた。
遠方から見にきてくれた友人との再会や、あのフラノフ兄弟をクリエイトしたパワフルな母親から賞賛され窒息しそうな抱擁を受けたのは忘れがたい嬉しい想い出となった。

 

CCK EXPE LIVE

 

つづく…

 


 

ブエノスアイレスCCK (Centro Cultural Kirchner)にて行われたEXPE南米ツアーのライブ音源をツアー先にてリリース中!
ネット上で配信できますので、もしも購入希望者がいましたら https://www.market.prhythm.org/product/concierto-cck-2018-buenos-aires/  からご購入ください。1000yen

 

CONCIERTO CCK 2018 BUENOS AIRES

 

CONCIERTO CCK 2018 BUENOS AIRES

Yoshitake EXPE (guitar)
César Franov (bass)
Santiago Vázquez (drums, percussion)
Alejandro Franov (synthesizer)
Fernando Kabusacki (guitar)
Marina Fages (vocal, guitar)

Recorded at CCK Centro Cultural Kirchner. 2018/03/25

 


 

 

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