南米ツアー雑記 vol.2

南米に初めて行ったのは2009年。

ブラジルの政府や大企業が支援する大きなフェス、PERCPANペルクパンというフェスに招聘されるという、自分には考えられないラッキーな誘いで、ブラジル音楽界の重鎮パーカッション奏者マルコススザーノに誘われ、彼とともにサルバドールとリオデジャネイロの大きな劇場で演奏できる機会だった。この時はベンツで迎えが来て5つ星ホテルに宿泊し、大手新聞の表紙を飾り、大好きだったフローラプリムとアイアートモレイラと同じフェスで彼らのバンドメイトと仲良くなったり、会場を出るとブラジル人女性に囲まれ電話番号が書かれてるラブレターを渡されたりと、まるで夢を見ているのではないか?と日本での自分の状況とのあまりの差に不思議な気分になったものだ。

 

南米の音楽が大好きだ。特にブラジルの音楽とアルゼンチンのブエノスアイレスの音楽が。ダイナミックに様々な要素が混ざり合いながらも洗練されている。
南米の音楽には不思議な浮遊感と精神性をどうしても感じて仕方がなかったのだが、エグベルトジスモンチのインタビューを読んでいた時に何となく気付いたのは、その秘密の一つにはインカ時代やマヤ文明から受け継がれるシャーマニズム、そこで重要になる神聖なアマゾンの神秘的な植物がキーなのではないか?ということ。

 

アマゾンのシャーマニズムについては少し知識もあった。ウィリアムバロウズが南米で探し求めた幻の植物ヤヘー、いわゆるアヤワスカについても。
随分昔に大阪にある大好きな民俗博物館へたまたま行った時に、アヤワスカの特別展が開催されていたことを思い出す。
アマゾンの神聖な植物を聖歌を歌いながら採取し1週間かけて煮込んだ飲み物を、シャーマンが司る儀式で祈りを込めて飲むと、普段は目に見えない異次元の世界へとトランスするという映像や資料、シャーマンで画家でもあるパブロアマリンゴの極彩色で不思議な霊界と繋がったようなヴィジョンの絵の展示がされていて目を見開かされた。
ちなみにこの博物館が建てられたきっかけは大阪万博における岡本太郎のコンセプトで、彼は本当に偉大な人物で僕も多大な影響を受けた。彼の書物は非常に面白く、彼の言葉はシンプルで力強く人気があるが、実行できてる人は非常に少ないのが残念だ。

 

初めての南米ではシャーマニズムを体験するチャンスはなかった。

日程も短くフェスティバルで演奏することだけでも大きな試練でアドベンチャーだった。

最終日にカフェテラスで物売りが大きな南米地図を売りに来たので、購入してそれを拡げ、次に来る時はチャンスがあるだろうか?とアマゾンを眺めながら考えたものだ。

 

そして2013年、2度目の南米ツアーはブエノスアイレスの素晴らしい音楽家たち、モノフォンタナやカブサッキらと夢だった共演をし、その後ブラジルではリオのカーニバルを楽しんだ。
黄熱病の予防接種を受けて来たので、次にアマゾン奥部へ旅立つ予定でいたのだが、友人のマルコススザーノがカーニバル期間の狂乱やエアチケットの高騰を理由に、とりあえずカーニバル中は彼の家でステイするように申し入れてくれた為、ありがたく彼の家に滞在させてもらってブラジル音楽の懐の深さを体感していた。
マルコススザーノはどんなリズムも変幻自在に操るパーカションのマスターで、80年代から現在までのブラジル音楽のほとんどに参加している。90年代にスティングのバンドメンバーだった事もあり、その頃スティングがブラジルのアマゾン原住民のシャーマンによるアヤワスカ体験で人生を大転換させて環境保全運動をはじめた事を知っていたので、ブラジル人のスザーノに相談すれば何か有力な情報を得られると思った。
スザーノは勿論シャーマンを知っていて紹介してくれるというが、まずはリオの彼の家に来いと言うので、どんどん日々が過ぎていっていた。

 

スザーノ自身はアヤワスカを体験したことはないが、多くのミュージシャン仲間が経験しているという話を聞かせてくれ、彼の妻マルーはミルトンナシメントなど音楽弁護士をするインテリジェントな人物で、親しい友人からアヤワスカ体験の素晴らしさを聞き、いわゆるよく言われるドラッグ的なネガティブな偏見は全くないが、もしも自分が飲んだら世界の見解が変わり今まで通りに仕事が続けられなくなって大きく人生が変わる恐れがありそうだから、今はやりたくないと話した。

 

リオの街全体は混雑し、数えきれないほどの打楽器隊が練り歩き、奇想天外に着飾った様々なダンサーが踊り、それを見る老若男女も一緒に歌い踊り、無限ループでリズムの洪水と興奮は止むことがなかった。
この頃の僕は慢性的に体調が優れず、内面にも何か硬い殻を感じてそれをどうにか破りたい気持ちで、そろそろお祭り騒ぎの喧騒を抜け、静寂なアマゾンの神秘を身体に受け入れる時を待ち望んでいた。アヤワスカには精神と身体の両方を浄化し治癒し、健康に戻す効果があるらしい。だがスザーノからのシャーマンの紹介は一向になく、ついにはアマゾンは次の機会にしてはどうか?と告げられてしまった。

 

僕はカーニバルを練り歩く中、知り合った人たちからリオでもアヤワスカのチャンスがあるという情報を入手し、ついにコンタクト先の電話番号を入手した。
残念ながら僕の希望するような原住民のシャーマンではなく、アマゾンの原始宗教と西洋キリスト教とスピリチュアリズムが融合したサントダイミ教団という、政府から正式にアヤワスカ使用を許可された新興宗教だが、早速スザーノに電話するように頼むと、分かったとは言ってくれるが、気が乗らないようで一向に連絡をしなかった。どうやら、もし何か事故など起きたら心配と、僕を安全に日本へ帰国させたい心遣いで遠ざけてくれていたようだ。

 

帰国2日前、スザーノはついに僕の頼みに根負けし、夕方になってようやく重い受話器を取った。
アヤワスカのような神秘に繋がる事は必然の流れがあり、その流れに従うのが良いと分かっていたので、今回無理なら仕方ないと半ば諦めていたが、受話器を置いたスザーノが驚いた顔をしながら、奇跡だ!今夜アヤワスカの集会があり参加の許可が下りた、今からタクシーに乗ればちょうど間に合うので行っておいで、と告げた。僕はこういう流れになる気がしていたのか、1週間前から果物と菜食でコンディションを整えていた。

 

つづく…

 

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