南米ツアー雑記 vol.7

大きな衝撃音とともに車は停止した。

フロントガラスに頭がぶつかり無残な姿になるはずが、幸いにも勢いある回転のお陰で、右腕右肩が真横のガラスにぶつかり、最悪の事態を免れたようだ。運転席側の車輪がもげ飛んだことで、強い衝撃をうまく吸収してくれたようだ。

 

夢の中でメリーゴーランドに乗っているような、サイレントでゆっくりした世界から、再び豪雨のノイズに包まれた過酷な現実へと突き戻された。

 

まだ生きていた、という感動を味わう隙もなく、脳は即座に次に行うべき事を指令してくる。

道路に散乱した荷物を引き上げなければ後続車からの追突で2次災害が起き大惨事になる。

 

身体は痛いが幸いにも全ての荷物を片付けたとき、寸前のタイミングで後続のトラックがすり抜けた。

次に携帯電話を手にするが、滝の中のような状態で使い物にならない。途方に暮れたその時、1台の乗用車が止まり、事情を察し緊急連絡を代行してくれた。

 

現場検証が終わり、レッカー車に運ばれ最寄りのインターチェンジで鉄くずと共に、ずぶ濡れ姿のまま置き去られた。

豪雨は嘘だったかのようにやみ、格別に鮮やかで美しい夕焼けが広がっていた。

 

奇跡的なことに壊れた電話がこの時だけ作動して友人へ連絡することが出来たのだ。その後、電話は2度と使えなくなった。

助けを待つ間、すぐさまギターを取り出して、肩や腕が激痛だが演奏することが出来るか?という確認をした。

2日後にアルゼンチンからアレハンドロとセサールのフラノフ兄弟が来日し、東京を皮切りに12箇所を2週間一緒に公演ツアーすることになっていたのだ。なんとか演奏は出来そうでホッとしたが、わずかな時間で鉄くずになった機材車の代わりを手配しなければならない。

 

奇跡的に連絡がついた友人は遠く離れたところから駆けつけ、全ての荷物を積んでさらに遠く離れた自宅まで送り届けてくれた。道中、友人の奥さんはレイキというヒーリングで痛みを和らげてくれた。

災難時の友情と優しさは本当に身に沁みる。果たして自分は彼らやその他の人たちにお返しが出来るだろうか、と自問しながら、恩のありがたみに浸りながら眠りについた。

 

翌日病院へ行くと骨折が発覚して緊急手術を言い渡された。だがその時間も必要もないと断り、保存療法を専門とする外科へ行ってタスキのような補助具で固定してもらい、翌日からの日本ツアーを何とか無事スタートさせる事となった。

 

ローフードという熱処理をしない生の食事法があるが、そのムーブメントのきっかけになるナチュラルハイジーンという食事療法がある。ローフードレストランを営む友人から教えてもらったのだが、夏の季節だったので、実験的にほとんど果物だけを食べて過ごした。

 

午前中は果物だけを摂り、昼食と夕食は生野菜を中心としたシンプルな食事を心がける、ナチュラルハイジーンの理論を忠実に試してみると、半信半疑だったが、結果的に骨折の回復スピードは尋常ではない程に早まり、担当医も回復力に非常に驚きサンプルとして資料をまとめた。

回復力の秘訣は食事をほぼ果物にした事だと伝えたが、医者には信じれなかったようだった。

 

つづく…

 

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