南米ツアー雑記 vol.9

2018年。5年の歳月を経て再び3度目の南米ツアーの機会が訪れた。

 

以前からアマゾン奥地に現存する原住民とその生活の中心となるシャーマニズム、原始的なスピリチュアリズムと精霊信仰に興味があった。
アマゾンに限らず、昨年はボルネオ半島の首刈り族のところへ行ったり、今後も中国雲南省や東南アジアの少数民族やアフリカのピグミー、北海道のアイヌ、いたるところにこの共通点はあり、特に首刈り族と武士の首切りの源流については大きなインスピレーションを得ている。

 

アマゾンへはいつか来ようと願っていたが、今回ついに南米ツアー中に半月ほどのオフを作り、そのうち10日間ほどシピボ族という部族の集落に6時間イカダみたいなボートに乗って訪ねることになった。

 

シピボ族はアヤワスカというアマゾンの植物の蔓とその他植物を煮込んだ薬草茶を使った儀式をすることで知られるが、このところ有名になりすぎて1回の儀式に5千円~1万円くらい、宿泊料も都会のホテル並みに高くビジネスとして観光業化しているという噂だ。

 

中でもサンフランシスコ村は有名で、欧米人を始め日本人も多数訪れており、偽シャーマンも多く、若い女子なんかは体の危険が伴う場合もあるらしい。
携帯電話も繋がるし、お金を稼いでネットカフェを経営するシャーマンもいるらしいので、随分とイメージが変わってきた。中には日本人のシャーマンもいるそうだ。ちょっとしたバブルでそのうちディスコテックでも出来るのではないかと思うほどの勢いだ。

 

アヤワスカ儀式の修行は1回程度では到底、奥深くまでは潜り込めない。最低2週間できれば数ヶ月の修行が望ましいとされている。
旅で知り合った人たちから、優良シャーマン情報もいくつか得ていたが、僕は音楽だけで生きるサバイバル的経済状況なので、自分の予算では頑張っても数日程度しか滞在できないしで、サンフランシスコやその他の有名な村へ行くのを少しためらっていた。

 

オフ前日、ちょうど旧正月の新年新月にペルーの首都のリマの美術館でコンサートをして、打ち上げの席でこの話になったのだが、ちょうど横の席の人が訪れた集落のシャーマンはお金の要求は一切せず、2週間滞在し毎日のように儀式を受け、肉体的にも精神的にも浄化されて最高の神秘体験だったらしく、絶対そこへ行って欲しいと強く勧められた。
どうやらその集落は携帯の電波も飛んでおらず、電気も水道もない完全な原始的なオフグリッドだと言う話だ。

 

その集落とのコンタクトは奇跡的タイミングでぴったりハマり、月に数度街に買い出しにくるシャーマン一家が所有するボートに乗り込むことができ、気乗りしなかったサンフランシスコ村には向かわずに済んだ。

 

乗り込んだボートにはシピボ族以外にも神秘を探求する欧米人が数人乗り込んでいた。
色々と説明をしてくれるブルガリア出身のベルリン在住の女性と話していると、どうやら彼女もミュージシャンで演奏しないか?と誘われたが、今回は楽器は街に預け手さげカバン一つで、演奏するつもりもない。

 

数年前ブラジルでアヤワスカを体験したことはある。だが今回は伝統的シャーマニズムに則った儀式が毎日連続して執り行われるので未知の冒険だ。それは地球の裏側まで来るという物理的なものではなく、精神的な探検なのだ。

 

僕たち現代人の多くが心に傷を負っている。

 

僕も幼少期から今にいたるまで、世間・社会によって傷ついて歪んだ心を持っている。
親から社会から常識から「禁止」という不条理を受け取らされ続け、成長することによって、潜在意識の根深い部分から自分に嘘をつき続け、本当の自分というものを見れず、それを忘れて生きて行くことになる。間違いだらけで嘘を嘘で塗り固めた世界に閉じ込められ、やがて自分もその住人となるのだ。
それを少しづつでも改善できる可能性をこの神秘の植物やある種の生き物にあり、古代から原住民は護って来たのだ。

 

友人から紹介してもらった話。フランスの有名な人類学者、レヴィ=ストロース(岡本太郎の先生でもある)の『悲しき熱帯』という有名な紀行記があり、その弟子ピエール=クラストルの『国家に抗する社会』という本がある。その趣旨は、インカ帝国のような巨大帝国の周辺に住んでいる「未開」と言われるアマゾンの部族は発達から取り残されているのではなく、むしろ積極的に国家権力の出現を防止するような社会の仕組みを持っているというものだ。

 

アヤワスカは死の儀式と言われる。飲む前はいつも、勇気を奮い起こさなくてはならない。
死と向き合い、死んだようになり、時間感覚もなくなる。鮮やかなヴィジョンが可視化され、こちらの領域にいる自分の前に、今までの人生が通り過ぎていく。

 

つづく…

 

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