MEDIA INTERVIEW


MUSIC MAGAZINE(2004年1月号)
MUSIC MAGAZINE(2004年1月号)表紙
MUSIC MAGAZINE ハウス/テクノ/ブレイクビーツ
2003年ベストアルバムの一枚に
nutron "spectra" が選ばれました。

MUSIC MAGAZINE(2004年1月号)中ページMUSIC MAGAZINE(2004年1月号)中ページ
 
カジカジ(2003年4月号) カジカジカジカジ | nutronインタビューページ
オーガニック・アンビエントかな?
いや僕らなりに境界を外した音
=ファンクなんですが。
昨年末、人知れず、とんでもないアルバムが発表されていた。気の弱いCD店のスタッフはそのアルバムを、アンビエント・コーナーに置いてよいのか、現代音楽コーナーに置いてよいのか悩みに悩み。コアなハウス・ヘッズは、天皇ラリー・レヴァンが溺愛したミニマル・サイケの歴史的金字塔“E2−E4”なみの超大作と熱狂。ゴア・トランスマニアはパーティー帰りの朝のクルマの中で大チルアウトしつつ再トランス。「アーチスト名とか覚えられないんですうう〜」のカフェ勤めコギャルも「なんか音のくり返しが気持ちよくってぇ〜」と知らないあいだに店でかけまくってた。

この突然のCD。スペース・ギターとドラム、たった2人編成の関西のユニット、nutronが送り出したデビュー・アルバムだ。小インディーズからのデビュー盤にもかかわらず、不気味な上昇曲線で全国から絶賛されるこのアルバム、しかしスタートは意外なところからだった。

真のオリジナリティーに至った
快(怪?)プロセス。


ヨシタケEXPE(ギター:以下E)「最初は明確にアルバムを作るつもりではなかったんですよ。ドラムのタカハシ君とは昔からの知り合いで。久々に会うことがあったから、スタジオでも入ろか、って感じで遊んでたら、やっぱり息があって。じゃあ録音しよか? ってことになって」

タカハシミノル(ドラム:以下T)「2人で一緒に音を出すことは、プレイやセッションというより“会話”。楽器を媒介にした会話ですね。この感覚はスタジオ遊びのときでも、レコーディングのときでも同じでした。だから本番の録音の時でも、事前に必死でリハーサルしたり、打ち合わせしたりってことはほとんどしませんでした」

― 彼らのアルバムはある意味で半・ライブ・アルバムともいえる特異な方法でレコーディングされている。舞台は昭和30年代のエキセントリック・レトロモダンビル、難波の“味園”。

E:「あの怪しいビルの地下にあるクラブ、っていうか異空間マカオに僕たち2人とエンジニアのハヤシOGさんの3人で4日間こもって。1日6時間づつぶっ通しで音を出し続けて。ええ感じ、と思った部分を使いました。その時のハードディスクに後でもう1回、ギターやシタール・ギターをかぶせたり、エフェクトをかけて音の質感をいじったりはしてますが、いわゆる大げさなエディットはしてません」

T:「今回のアルバムでは、なるだけ編集をさけて、自然さを意識しました。」

稀代のオーガニック・アンビエント。
実はアクシデントの産物?


− アルバム1枚を通して、穏やかなα波がリスナーにだだもれ。完全にチル・アウト、ミニマル・ダウンビートを照準にしたように聞こえる本作。しかしこのスタイルはある“事件“の産物という。

E:「ライブではバトゥカーダみたいなんや、思いっきりファンキーなアップビートもやるんですよ。2人でマカオに籠もった時も、かなりの時間を熱いファンキーな曲に割きました。ところが・・・・」

T:「なぜかアップの曲のところにだけ、録音したデジタルデータにぶちぶちノイズが入ってるんです。で、使えなくて」

E:「何かの精霊の仕業、なんていう人もいるんですが(笑)。最終的に、使えるアンビエントっぽいところだけを集めて、あの構成になりました」

イーノとブーツィーは
いかに出合ったか?


−延々とひとつのフレーズを繰り返しながらも、絶妙のエフェクトで空間的なゆらぎを生むコズミックなギター。耳あたりは控えめながら、よく聴くと民族音楽的フレーズから、アフロなシンコペーションまでを自在、かつ自然に繰り出すドラム。2人がいかにこう言っても・・・・

E:「演奏してるときは何も考えてへん。ほんまになんも。ただそのとき周囲から感じた感覚を音にして出してるだけで、」

− そう簡単に生まれるわけがない。彼らの音ほど圧倒的なオリジナリティは。このオリジナリティにたどりつくまでの道はあったはず。

E:「Pフンクが好きで。特にブーツィー・コリンズとかが。この辺のスタイルをまねてファンク・ギターを極めようとしてた時期はかなり前にありました。ホイットニー・ヒューストンのドラマーだったドナルドや、タックヘッドのバーナード・ファウラーなんかと一緒にプレーして、彼らに“ええ感じや!”って親指立てて褒めてもらったりしたときは、めちゃ嬉しかったんやけど、でもふと思いました。いくら真剣にPファンクやマイルスやジミヘンの真似をしたって、彼らを“超える”ことは無理。それ自体は凄い努力やと思うけど。彼らに限りなく近づいたとしても、オリジナルやないから無意味やと。日本人には例えば同じ記録でも“オリンピックの走り幅跳びで、黒人がジャンプした瞬間のダイナミズム”みたいな感動は出せない訳だしね」

T:「彼はもともと“マネは大嫌い”って人間でしたよ。スタジオミュージシャンみたいな仕事引き受けてた時も“こんな仕事、拷問や!”って言ってましたし。僕もどちらかというと普通のドラムだけでは満足できなくて、タブラやジャンベを叩いてた時期もありましたね」

E:「僕は黒人の感じと、いわゆる音響系の感じと、両方好きでした。中でもブライアン・イーノの発想は好きです。アンビエントって音楽概念もスタイルも彼の発明品でしょう。音楽をミュージシャンによる“プレイ”じゃなくて“音自体の質感”でとらえるという発想。これには影響受けてます」

しかし、ライブでは
ドラマーが5人も、なんて日が!?


― 壮大なスピリチュアルさの背後に、蜃気楼のようにプリミティブなエッセンスが見え隠れする本作。アンビエント/チルアウト・アルバムとして、10年に1度の世界的傑作という評価も固まりつつあるが、また意外に彼らはこの作に違う視点を持っている。それは

E:「アンビエント、でもいいんですけど、突き詰めると、このアルバムはファンク・アルバム。僕らなりのファンクの形なんです。ファンクって型通りの黒人音楽っていう意味だけでは絶対なくて“、ばかでゥい好奇心から生まれてくる、新しい融合”や“常識的な境界線を外していく”ことかなって思うんです。そのやり方には人それぞれに無限の道と方法があるはずやし。だからぼくらの考えるファンクは、音楽だけやなくって、生活なども含む概念って感じかな。ALL ACCESS U CAN FUNK!!」

− 彼らが“常識的な境界線を外していく”外しっぷりの半端じゃなさも、補足しておくべきだろう。例えばこれぐらいのことは日常的。

T:「nutronとは別名義ですが、次に彼と一緒にやるライブでは、ドラマーだけで5人。他にベースからタブラまで、総勢12人編成。ライブハウスのステージにはドラムしか乗らないから、その他のメンバーはお客さんと同じフロアに、はみ出してプレイですね」

E:「僕はこの日は2つか3つのギターアンプをつなげますが、ソロライブの時とかには最大7台つないだこともあります。それぞれ違う音色と音量にセットして、同時に鳴らして、アンプごとの音量をコントロールして、ちょうどミキサーのフェーダーと同じ役割。エフェクターのペダルは床に20個くらい置いて、それもコントロールしながら演奏してます」

― こんなことをさらっと言ってのける怪物2人。その活動に触れることのできる関西ベースのパーティーが『EXPE2003』、『A.RI.GA.TO.U.』(こちらはボアダムスのEYE氏と共催)。この2つのパーティー名は今ここで、思い切り記憶に焼きつけてください。今後、確実に世界中から殺到するはずのオファーで、彼らの活動が関西から離れがちになる前にこのユニットをナニガナンデモ追いかけるべき・・・・・ということは、ここまで読んでくれたあなたには、言う必要はないでしょうが。

ニュートロン スペクトラ comma-11
(nutron / spectra)